「甦る上条城 ―戦国の地形が今に残る―」
2025年10月11日、愛知県春日井市にて上条城跡(じょうじょうじょうあと)の現地説明会が開催されました。
上条城は、建保6年(1218年)に小坂孫九郎光善(のちの林氏)によって築かれたと伝えられ、戦国時代には豊臣秀吉が竜泉寺からの帰途に立ち寄ったほか、池田恒興が小牧・長久手の戦いの際に陣を構えたという伝承も残るなど、地域の歴史の中で重要な位置を占めています。
今回の発掘調査では、城跡南側において堀と土塁の構造が非常に明瞭に確認されました。
特に、土塁頂部と堀底との高低差が約5〜6メートルに達し、築造当時の地形が驚くほど良好に残っていることが明らかとなりました。実際に現地に立つと、戦国の防御構造がそのまま目の前に立ち上がるような迫力があり、当時の城の姿を彷彿とさせる保存状態です。
さらに、堀の内部からは陶磁器や茶器などの遺物が数多く出土し、土塁を築く前に地盤を丁寧に整地していた痕跡も確認されました。これらの成果から、上条城は自然の地形を巧みに利用しながら、時代ごとに改修を重ねて維持されてきたことがうかがえます。
このように、中世城郭の築造技術や防御構造を具体的に示す事例として、土木考古学的にも極めて貴重な資料となっています。
当日は多くの市民や関係者にご来場いただき、調査担当者が現地で成果を解説しました。
堀や土塁の構造、出土した遺物の展示を通して、参加者からは活発な質問や感想が寄せられました。
今回の調査を通じて、上条城跡の歴史的価値とその保存状態のすばらしさを改めて実感する機会となり、地域の歴史を未来へ伝える大きな一歩となりました。


